留意事項
 
 まず1件目、ハーモニーディレクターという純正律の音の出る某メーカーの楽器の音を聞いていただきました。純正律でハモる場合、普段ピアノで聞いている平均律のハーモニーよりさらにシンプルな響きが聞こえてくることに気づかれたと思います。無伴奏の男声合唱なら、よりこの純正律の響きが美しく聞こえやすいはずです。急にフェスでできるとは思いませんが、各パートが体をゆるめて適切な響きのピッチを心がけるとあれほど透き通ったハーモニーになることに、10月は目標を設定しませんか?
 2件目、フェスの演奏に向けて注意点を練習の最後に申しましたので、いくつか列記しておきます。
〔砂上〕
@冒頭の「海」の「う」がともすると、硬く、狭い音になります。「海」のイメージにふさわしい、深い、柔らかい発音をして下さい。第一声で倉男の今回の演奏のイメージが決定するわけです。
A8分音符が並ぶ部分、たとえば「おまえをわたしのおもいでとよぼう」など、1つの音符を音採りの延長で「ベタ」に歌わないこと、言葉として「文節」がわかる発音を心がけてください。
B3ページ右下「砂の上に」の3連符の部分を急がないで下さい。次の4ページはいきなりリタルダンドです。
C4ページ1段目最終小節のベース系は言葉を立体的に出せるように注意を!「しおからい」「しおからい」「みず」と聞こえるようにフレーズを作って下さい。テンポのゆるみ・急ぎは禁物。
D3段目、内声部「おまえはとおくから/やってくる」の「ら」は1拍目でアクセントが普通はつきますが、ここでは「や」が大切。「ら」は助詞の語尾ですから絶対に軽めに。このことは、ベースの3ページ4段目の「おまえの」の「ま」の跳躍した音や4ページ4段目の「なみよ」の「み」も共通。
E4ページ5段目、A「そうしてなぎさをかむがいい」B「そうしてなぎさをはしるがいい」の二つのフレーズはそれぞれにクレシェンド・ディミニエンドがついています。「山」がそれぞれにあるのです。AよりもBを少し大きめに。Aの中の「し」は無声音に近く発音して下さい。
F5ページ1段目「おまえにしぶきで〜ぬらすがいい」のメロディーの受け渡し注意。そしてアッチェレランドしながらクレシェンドで効果的にフォルテの「ぬらすがいい」のリタルダンドに持って行きましょう。
G2段目の「海よ」の繰り返しは、詩人の回想の中の「美しい海」が心の中に鮮明に表れてしまうまでの部分、ぐっと感動を押さえた演奏をして下さい。体を十分にゆるめた、柔らかい音で。
H3段目のテンポプリモからは完全に「美しい思い出の中の海」が表に出てくる箇所です。さわやかに「思い出」を歌いましょう。最後の「よ」の口の形は絶対に縦開きのいい声ですよ!
〔鴎どり〕
@14ページ1段目「ああ/かの烈風〜砂丘の空に飛ぶ鴎」について、「ああ」は感嘆詞です。「かの」と続けてしまわないように。「砂丘」の「s」の子音は早めに長めに。「かもめ」の「め」は強く突きすぎないで。
A2段目から3段目にかけてはベースは絶対に気張らないで下さい。普通でいいのです。
B4段目「かってわたしも〜ものであった」何度も繰り返されるこの詩の大切な「テーマ」です。リズム・シンコペーション注意。この部分だけは特に今夜はよく練習しておいて下さい。「て」に軽いアクセントをつけておいて下さい。
C15ページ1段目から4段目にかけて、ベースとセカンドのメロディーの受け渡し、ゆったりと歌いましょう。気張らなくて結構、それよりメロディー以外のパートが絶対に引き立て役に徹して下さい。ベースは3段目の3連符は絶対急がないで!
D5段目「ものであった」の「た」は普通アクセントがつきますが、アクセントを抑えめに入って、次の「波は」に向けて軽くクレシェンドをする方を優先させるとより効果的な演奏につながると思います。
E16ページ1段目、「あまたたび」の部分、メッツォフォルテがついていますが、1段目最後の「その轟き」のフォルテッシモとのコントラストに徹するためメッツォピアノまで落とすつもりで演奏します。ついでに3連符は急がないで下さい。
F3段目「きえてゆく」の「て」の付点が曖昧にならないように。「く」の上のフェルマータはゆったりとかけます。ただ、今回のフェスについては演奏が時間オーバーになる懸念がありますので、以後のパートソロ間のフェルマータは短めにします。それから3段目最後の小節のクレシェンド絶対にやりますぜ!
G5段目、ピアノの「かつて」「彼らのような」に少し「山」を。そしてアッチェレランドしながらクレッシェンドで最後の「山」17ページに持って行きます。
H17ページ2段目の最後「なお」のところは、一旦ぐっと落として3段目の「この浦に」のクレッシェンドを効果的に行います。ブレスして「たえだえに」をたっぷりリタルダンドします。
I「人の名を」以後のメノモッソの部分はかえって体をゆったりとリラックスさせて豊かで柔らかな響きにしましょう。悲壮感は和音で十分出ています。歌う方までが苦しげな表情では客が困ります。
J4段目Dモールの和音確実に!テナー系とベースは互いによく聞きあって。バリトンはその上にうまく乗っかって下さい。
K最後の「ものであった」はメノモッソからアテンポで早めます。指揮をよく見てください。しかし、「あっ」で譜面通りリタルダンドをかけています。これも指揮者の右手をよく見てください。きちんと「促音」の「っ」を8部休符で「歌った」後(音は出ていなくても休符も歌っているのですよ)、最後の「た」は決して横開きの口の形にならぬように、大根切りの要領ですぱっと口を開けた状態で、腹筋
で切ります。そうすればシンフォニーホールなら「ワーン」と残響が残って気持ちいいはずです。ついでに気持ちいい拍手もあるかも。
 以上、大変長くなりましたが、おさらいです。中間発表として頑張りましょう。                       by Yasu