男声合唱曲集「光のうた」解説
(川崎 洋作詩 大中 恩作曲)
 1980年、広島の崇徳高校グリークラブにより委嘱、指揮:天野守信氏、ピアノ:三浦洋一氏により初演された。
 倉男が5年前に取り上げた同グリーによる委嘱作品『海に寄せる歌』(多田武彦)の三好達治の詩も、「海」――時に優しく、時に荒々しい存在であり、すべての生命を生み、育んだ存在――とそれを見詰める「人間」が歌われていた。今回は、その「海」に加えてもう一つ、「光」――この世界の命を照らす存在――という新たなテーマを持つ作品として取り組んできた。
 初演の崇徳グリーの若々しい命の「光」として作曲されたこの組曲、さあ、本日は年輪を重ねた倉敷男声合唱団として「光」のメッセージをどのように再現できるか楽しみです。
1.日の出
 黎明の水平線。闇の世界に光が射し始める瞬間、それは命の生まれる瞬間。その光は黄金の歌。大海を思わせるピアノの前奏から夜が明けていき、夜明けの歓喜が速いテンポで歌われるうちに、たゆとう波をピアノが奏でながら一日が始まる
2.海
 休むことなく無限に打ちかえす海。未来にも変わることなく寄せかえす海。その遙か彼方の水平線で空と海は青い色を何も言わず分かち合う。たとえその「青」が幸福であろうが不幸であろうが、同じ時代に存在するものとして。前半、打ち寄せる波をピアノが奏でる中で海を見詰めるまなざしが静かに歌われる。後半、昼間の大海原と空の様子が高らかに、そして人類の共生に対する思いが優しく歌われ、最後に海への呼びかけが波のように繰り返されながら静かに消えていく。
3.日影
 辛いとき、苦しいとき、それはたとえば昼間の日影。ともすれば、人生を夜の闇と思う。しかし、光に向かって、未来に向かって歩き出せ。必ず朝は来るから。闇だと思ってもどこかに必ずほのかな光は見つかるから。テンポ良く元気に鼓舞する部分に続き、8分の六拍子の軽やかなリズムに乗って未来への希望が示されるうちに、希望の確信が静かに歌われる。
4.夕陽
 一日の終わり、そして明日を迎えたときにも変わらぬもの。それは人々の真実の心、愛。それを信じて、きっと明日も人生が始まる。夕陽の沈んでいく様子がピアノの前奏によって奏でられ、明日に向かって飛び立つ鳥たちが躍動的に歌われる。直後、4パートが複雑に入り交じりながら、様々な思いの様として歌われ、明日を生きる者として抱くべき愛が叫ばれる。
5.ランプ
 私たちを照らす「光」は様々な明度を持つ。その「光」を見詰める人々も様々な思いを持つ。人も生きている、ランプの光も生きている。四方を吹く風を模したピアノの前奏に始まり、様々な光や思いが激することなく悟りのように静かに繰り返し歌われて一日が終わる。